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第25回 二日制対局のスピード感の変化

 将棋のタイトル戦には、二日間かけて一局の勝敗を争う棋戦がいくつかあります。一般的に二日制と言われる棋戦で、持ち時間が8~9時間と非常に長いという特徴があります。
 二日かけるといっても、もちろん不眠不休で対局するわけではありません。ご存知の方も多いかもしれませんが、1日目は午後6時の時点で封じ手を行い、そこで中断。2日目の午前9時から改めて対局再開となります。
 1日目でどこまで局面を進めるか?戦いを起こすべきか、それとも駒組みで終わらせるべきか?これについての考え方は、棋士やその時々によっても異なり、一概には言えませんが、ある程度の傾向は出ています。名人戦におけるデータ*1を調べてみたところ、1日目の平均手数は45手。と言ってもイメージし辛いと思いますが、例えばお互いに矢倉にがっちり囲って攻撃態勢を整えれば、大体45手といって良いでしょう。つまり本格的な戦いになるケースはあまりないということです。
 しかし、近年では1日目に戦いまで進めてしまうというケースが多いようです。例えば数年前に羽生-森内戦というカードが4期続きましたが、この戦いでは1日目に70手以上進むことが何度かありました。70手ともなれば、もう終盤に入っています。もっとも、これらの対局は終盤まで定跡化されていた、という理由があったのですが、それを差し引いても近年は進行が早いといって良いでしょう。

局面が緊迫していると、封じ手の重要性も高くなる。封じ手を巡る争いが表に現れることはめったにないが、水面下では常に駆け引きが行われている。

 ところで、なぜ1日目の進行が早くなったのでしょうか。
 一つには、全体として中終盤まで定跡化されている変化が増えたということがあります。この傾向は、特に相居飛車において顕著で、矢倉では「矢倉91手組」という驚くべき定跡があります。*2
  もう一つは「結局のところ将棋は中終盤が勝負」という考え方に回帰しつつあるためではないでしょうか。少し前まで、将棋界の主流の考え方は「序盤でわずかなリードを挙げ、それを終局まで維持する」という勝ち方を理想とするものでした。しかし、ここ数年はそれと異なる考え方を持つ棋士が増えたように思います。例えば「厳密には不利だけど、こちらの方が玉が堅い」とか「指し手が分かりやすい」といった判断基準を持つ棋士で、渡辺竜王や糸谷八段が代表格です。このタイプの棋士は中終盤が勝負所と見ているので、必然的に序盤は飛ばし気味になります。*3
 さて、1日目の進行が早くなるというのは、将棋ファンにとってはありがたいことかもしれません。封じ手の局面で次の一手をあれこれ考える楽しみも生まれますし、何より単純に、終盤戦の長い対局というのは観戦していて面白いものです。「1日目は退屈だから……」と思っている皆さんも、試しにご覧になってはいかがでしょうか。もしかしたら新しい発見があるかもしれません。


*1 詳細な記録が残っている第35期~第73期のもの。
*2 この定跡は公式戦や研究会でさんざん指された末に「先手勝ち」という結論になり、現在では後手が避ける必要がある。
*3 もちろん序盤は綿密に事前研究してあり、決して大雑把に指すという訳ではない。

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