第63期王将戦七番勝負渡辺明王将対羽生善治三冠第5局

 第63期王将戦七番勝負第5局は2月27、28日に神奈川県秦野市「元湯陣屋」にて行われた。渡辺王将の先手で始まった本局は、相居飛車の代表的な戦法の一つ、角換わり腰掛け銀の将棋に。角換わりの将棋は年々定跡化が急速に進んでいる分野の一つであり、本局も最先端の将棋となった。羽生三冠は守りに重点を置いた陣形を取り、42手目△1二香から穴熊を目指す。そして、44手目△1一玉と後手玉が潜った瞬間に先手は45手目▲4五歩から開戦。渡辺の攻め、羽生の受けという構図となり、仕掛け後も実戦例のある進行が続いた。59手目▲3五歩が渡辺の新手。対して受けに回る展開も考えられたが、羽生は銀桂交換の駒損を厭わず、攻め合いを選択。一直線の変化に進み、65手目▲6八金右で1日目が終了した。
 66手目△7八銀成から2日目がスタート。尚も後手は豊富な持ち駒を頼りに直線的に攻めていったが、先手に駒を渡し過ぎたために反撃がきつかった。76手目△4六金で先手の飛車が捕獲されたかに見えたが、対する▲4二角成の角切りから▲1一銀のタダ捨てという強烈な攻めが炸裂。ここで渡辺のペースとなり、その後は確実に後手玉への包囲網を敷いていった。最終盤、95手目▲6九金とタダ捨ての金で一手の余裕を得た渡辺が確実に後手玉を寄せ切り、107手で勝利。角換わりの定跡に新たな1ページが加わった一局だった。勝った渡辺はシリーズ成績を3勝2敗とし、初防衛へ王手を掛けた。

 この模様は、第5局の立会いを務めた深浦康市九段が出演する徹底解説番組 「第63期王将戦七番勝負」にて4月16日(水)午後10時~より放送。

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