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2015.07.29

第18回 自己流?最新型?戦法の選び方

 みなさんは将棋を指すとき、どのような戦法を選びますか?棒銀一筋という方もいるかもしれないし、自己流の戦法を編み出した方もいるでしょう。では、ひたすらプロの最新型を追うという人はいるのでしょうか?少し前なら、そんな人はマニア中のマニアと言っても良かったかもしれません。ですが、どうやら最近では少し事情が異なるようです。
 日曜日、千葉県のとある将棋道場。お客さんは30人ほどで、上は五段クラスから下は級位者までさまざま。戦型は矢倉がもっとも多く、次にゴキゲン中飛車、相振りと続き、横歩取りも多く指されているようです。
 対局を眺めていてふと思いました。「ずいぶん整然とした将棋だなあ」
 例えば矢倉なら3七銀戦法か脇システム。ゴキゲン中飛車なら超速。横歩取りなら3三角戦法といった具合で、いかにもプロの公式戦で数多く指されていそうな将棋が多いのです。唯一力戦が多いのは相振り飛車ですが、これはもともと定跡があまり整備されていないためにそう見えるのでしょう。
 一昔前は、このようなことはあまりなく、ある程度強い方でも序盤は自己流だったように思います。自己流といってもめちゃくちゃな指し方という訳ではなく、力戦系、言うなれば腕自慢のオジサン戦法が幅を利かせていたのです。
 僕が道場に通うようになったころ、プロ棋界では横歩取り中座飛車が現れ大流行していました。ですが、その流行の波はアマ棋界、少なくとも僕の周りには影響を及ぼすことはありませんでした。当時僕は小学生で、相横歩取りや4五角戦法といった奇襲含みの指し方に、自分なりのアレンジを加えたものを得意戦法にしていました。そして、相手の戦法も同じ系統のものが多く、中座飛車が実戦で出てくることはほとんどなかったのです。
 当時、中座飛車に関して苦い思い出があります。僕は8連勝中で、次戦勝利すれば三段昇段という一番。振り駒の結果後手となり、戦型は横歩取りへ。いつもなら先ほど書いたような奇襲含みの戦法を使うのですが、たまたまその日読んだ本にこのような記述があったのです。
 「中座飛車が猛威を振るっており、後手の勝率は6割を超える」
そんなに優秀な戦法なのか。それならちょっと使ってみようかな。そう思って中座飛車を採用した僕ですが、いざ進めてみると全く指し方が分からない。それもそのはず、通常は飛車を8四に引くところを8五に引くのが中座飛車であるといった、その程度の知識しかないまま指していたのです。結果は言うまでもなく大惨敗。あまりのショックに数年間中座飛車をやめてしまいました。
 さて、現代において最新型の知識を手に入れることは、さして難しいことではありません。何しろ、公式戦の中継や高度な定跡書の増加によって、情報を仕入れる手段には事欠かない時代です。アマの戦法の変化はこういったことが影響しているのでしょう。しかし、それらをきちんと指しこなせているかというと、やはり皆が皆そうでもないようです。ある小学生同士の対局は、横歩取り8四飛VS中住まいという、プロも顔負けの戦型。二人とも級位者にも関わらず、堂々の駒組みです。ところが、戦いが始まるとお互いに四苦八苦で、何をやっていいのか分からない様子。終局後、僕は思わず口を出します。
「これはどこで覚えたの?」
彼らは異口同音に「テレビで見たのでやってみました」との返事。

子ども大会で良く見られるのが穴熊戦法。この女の子は上手く攻めきることができたが、姿焼きになるケースもよく見られる。 穴熊も割と上級者向けで、決して簡単な戦法ではない。

 上達するためには順序というものがあります。「攻めは飛角銀桂・守りは金銀三枚」という格言がありますが、基本ができるようになるまではこの格言に沿った戦法を選ぶのが得策です。この二人の戦型は、プロでも指しこなすのが難しい最上級クラスのもの。恐らく、二人とも有力な戦法と思ってこの作戦を選んだわけではなく、プロの真似をして楽しんでいるだけだったのでしょう。
 これを読んでいる方の中に、身に覚えがあるという方もいらっしゃるのではないでしょうか。本来ならば、上達のためにはきちんと順序立てて勉強するべきですし、勝ちにこだわるならば自分の得意戦法を掘り下げるのが得策でしょう。ですが、将棋の楽しみ方は人それぞれ。一足飛びに身の丈に合わない戦法に手を出してみる(そして中盤以降ヒドイ目に遭う!)のも立派な楽しみ方と言えるかもしれません。

 当コラムは、二・三週に一度のペースで更新していく予定です。 また、皆様のご意見ご感想、取り上げてほしい題材などお待ちしております!お問い合わせメールフォームよりお送りください。
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